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2020.04.15

小さな畑をはじめました

3月ごろから、海士町でもふらっとスナックに飲みに行くことや、みんなで集まってワイワイやることが、当然のごとくむずかしなってきた。せっかくあったかくなってきたのに、不要不急のキャンプだって、しばらくは我慢。

自粛と、我慢と、オンライン飲み会が続く日々だけど、今月やってみてよかったのは、今住んでいるシェアハウスの裏庭を開墾し、小さな畑をはじめてみたこと。

こっちに移住してから、畑やりたいな、と思ってはいたけれど、なかなか一歩目が出なかったので、これも何かの巡り合わせだと思いたい。ということで、まずは初日の記録を。

 

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同世代5人が住む我が家の裏庭はこんな感じであった。畑をはじめようにも、まずは伸びた草をどうにかしないといけないし、「え、どうやって耕すん?」っていうところから始まる。

まずは鍬、大きなスコップが必要そうだと、Google先生に教えてもらい、ご近所の中川さん家に借りに行くことに。

 

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写真の中川くんは、地元海士町の出身で、作業療法士として町の診療所に勤めている若きホープ。平素は居酒屋かスナックでの遭遇率が高いが、実家で大きな畑をされていることを思い出し、連絡を取ってみた。

そして中川さん家に伺い、畑をはじめてみようと思っていることをお伝えし、何を植えるのがいいか、しばし中川(父)と雑談を重ね、ブツをお借りできないかということをお伝えした。

 

すると中川くんのお父さんから「ほんなら、ウチのマメトラ使えば、ええだわい」と言われる。

「マメトラ???」「豆?」「虎?」

 

そう混乱する畑素人の僕の様子に気づいたのか、中川家自宅PCでマメトラが検索された。そして画面に現れたのは、土を耕す耕運機を製造している「マメトラ農機株式会社」のウェブサイトであった。「耕運機=マメトラ」。畑DAY1の僕の学びである。

 

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というわけで、鍬と、スコップを借りに伺ったら、なんとこちらの耕運機(三菱ミラクルスタート)を貸していただくことができた。中川さん、本当にありがとうございます。そしてまずは伸びた草を処理し、中川くんにも教えてもらいながら、マメトラで、ずんずんと土を掘り起こしていきます。

 

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最初はマメトラがなかなか言うことをきいてくれず、足を取られるものの、徐々に慣れてくると、これが無心の境地に突入し、土が徐々にやわらかくなってくるのが嬉しい(これを鍬とスコップでやっていたら、いったい何日かかっていたことであろうか)。

そして土を耕していると、何かの根っこの束のようなものや、小さな人参のかけらのようなものが出てきた。おそらく昔ここに住んでいた人が、畑をやっていたのだろう、ということが分かる。

今や、移住者のシェアハウスであるこの家の小さな歴史を感じて嬉しくなるが、実はこの根っこの残骸は、新しく植えた種の成長を妨げるらしく、ちゃんと綺麗に取り除いた方がいいと、中川くんから教えてもらった。

 

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作業開始からあっという間に3時間ほど経過。意地になってずっと続けてしまいそうだけど、腹が減ったので小休止で、昼ごはん。鶏肉と春菊をメインに、少し生姜を入れた蕎麦をつくりました。ああ、至福のひとときだなあと思う。遠足とか山登りの日に食べる昼ごはんみたいな味がする。

 

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そのまま昼寝したい気持ちをぐっとこらえて、夕方までもう少しだけ、作業を続けます。

耕運機の音に気づいたか、近所の人が覗きに来られて雑談をしたり、シェアハウスの仲間が一緒に手伝ってくれたり、近所の小学生が遊びにやってきて「山野くん、お馬さんやってー」と、なぜか耕したての土の上で、小学生を背中に乗せてほふく前進をしたりして、気づけば夕方に。

なんとか、大きな形ができてきた。まだ種も植えていないけれど、けっこう充実感があり、身体は少し痛いけど、頭はすっきりした感じがする。

 

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そしてゆっくりお風呂につかりながら、何を植えようか、もし野菜ができたら誰に贈ろうかなんて、勝手に先のことを考える時間は、けっこう愛おしい。

次の週末は石灰をまいて、その次の週末には種を植えたい。どうやらカラス対策もしないといけないみたいだ。飽き性な僕なので、ちゃんと続くといいなあという願いも込めて、引き続き記録をしていきたい。

(つづく)






山野 靖暁
Yasuaki Yamano

amatte 編集室 / 海士町在住
1991年生まれ、大阪育ち。京都とノルウェーでの大学生活、東京での会社勤めを経て、2018年に縁あって海士町へ移住。今は教育の仕事に携わりながら、島の暮らしを味わう日々。得意料理はだし巻き卵で、吉田修一さんの書くエッセイが好き。

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