7月末に穂が出てから約1ヶ月、この写真は9月6日に撮ったものですが、
少しずつ穂が黄色くなってきました。
7月末に撮った下の写真と比べると、色だけでなく穂が垂れてきていることも分かります。
8月の台風や大雨の影響も心配されましたが、順調に育っていることが何より嬉しいことです。
しかし稲とともに、稲の株と株の間にはヒエなどの雑草も順調に成長していて、
どうしたものかと悩んでいたのは、8月のお盆明けくらいだったかと思います。
除草剤を使っていない田んぼでも、僕のようにヒエがたくさん生えるところもあれば、
あまり生えないところもあり、同じ場所でも年によって状況が違うこともあるそうです。
このタイミングで田んぼに入ると根を痛めてしまうのかもしれない。
でも、この伸びきった雑草を放置しておくわけにもいかないような気がする。
どうしたものかと思い、師匠の宇野さんに相談することにしました。
僕は電話越しで、そのままにしておいても良いという返事を期待したのですが、
「田んぼの中に入って、鎌で刈った方がいい」とのこと。
稲刈りまで1ヶ月はあるので、稲が少しでも養分を吸収できるようにすること、
放置しても結局稲刈りの時に苦労するので、今のうちにやっておいた方がいいこと、
そう宇野さんに諭されて、重い腰を上げることにしました。
と言っても、1人では到底埒が明かない雑草の量ということもあり、
たくさんの助っ人とともに、いざ田んぼの中へGO。
このカマキリのようなお姉さんが持っているのがヒエですね。
先陣を切って、職場の大学生インターンの2人が手伝いに来てくれました。
この辺りはかなり生えてますが、みんなで腰を低くして稲とヒエを見分けながら、
根こそぎ鎌で取り除いていきます。そして足腰と体幹が鍛えられていきます。
夏休みが明けた頃には、田植えを一緒にした高校生たちも手伝いに来てくれました。
なかなか地味で大変な作業で、僕としては色んな人に手伝ってもらうのは
正直少し気が引けるところもあったのですが、田んぼの中に入りながら、
「なんか、トークテーマ決めようや」と1人の高校生が言いはじめて、
お互いの兄弟・姉妹の話や、高校に入学する前の話、最近の悩みごとなど、
ゆるやかな雑談をしながら、少しずつ作業を進めていきました。
何事も楽しみに変えていく高校生たち、本当にあっぱれです。
そうこうしていると、田んぼがある北分地区の皆さんに声をかけてもらい、
「がいな(大きな)草が生えて、無農薬でやるのも大変やね」「あんた、何年生だ?」
とさらに雑談が広がっていきます。
それから夕方に一仕事を終えて「プチ打ち上げ」と称して、みんなで晩ごはんを食べたり、
米を収穫した後にどうやって食べるかを考える時間なんかもいいものです。
あらためて田んぼはコミュニケーションのきっかけ、クッションみたいなものだなと思います。
もちろんコメをつくるためにやっているのですが、例えば僕と高校生の間に、地区の人との間に、
田んぼという1つのクッションが挟まってくることで、学校や家でいる時とはまた違う雑談や、
コミュニケーションが生まれてくるような気がします。
それはべつに田んぼに限った話ではなくて、何でもない単純作業がクッションになることで、
会話が弾んできたり、お互いに打ち解けていくようなことって案外あると思います。
実際のところヒエの除去は想像以上に大変で、トータル3日間くらいかけましたが、
まだ2割ほどは残ったままです。本当は全部やってしまいたいのですが時間が足りず、
来年に向けてどう工夫していくかは、僕自身の宿題でもあります。
そして今は商売としてやっているわけでないのですが、僕の田んぼは赤字だと思います。
ここまで投入してきた時間を考えると、コメは買った方が断然安いわけです。
ちなみに島の農家さんたちによると、コロナ禍の中で飲食店などへの出荷が減って、
卸先のJAなどに在庫が溜まり、これまで一袋6,000円で売っていたものが、
今年は1500円〜2000円ほど値下がりをしているそうです。
喫緊の課題として、このような状況をどうするのかということは、
もちろん島全体として考えていかないといけないわけですが、
僕のような、まだ兼業農家とも呼べないような初心者にとっては、
初年度の赤字は当然のことで、それでいいのかもしれません。
むしろ田んぼをきっかけに広がり、深まっていくコミュニケーションや、
このフィールド自体をどのような学びや、実験の場所にしていけるのか、
そういうところを掘り下げ、混ぜ込んでいくことに面白さがあるはず。
資本主義的な経済価値以外の側面として、小さな田んぼのコメづくりや、
島の農業にどのような可能性があるのか、引き続き楽しみながら、
地道に草を抜きながら、探究していきたいなと思います。