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2020.12.10

お話会 榊原有紀さん×根岸茜さん【前編】

2020年11月29日、東地区のアヅマ堂にて行われた第2回「ゆっくり話して、うっかり脱線しよう」。ここでは、島に住む2人のゲストをお迎えして、amatte編集室メンバーとともに、お茶を飲みながら、時には脱線しながらお話した模様をお伝えします。

 

地方創生や教育の分野で知名度を上げる海士町ですが、それはほんの氷山の一角。実際に住んでみると、この島の魅力は「多様な人がそれぞれの思いをもって、いろんなことを実践している」ところにあると思います。普段、メディアではほとんど取り上げられることのない島民の暮らしとその背景にある思いに耳を傾けてみましょう。

 

ゲストプロフィール

榊原有紀さん

1979年生まれ。隠岐島前高校卒業後、奈良大学国文学科で和歌を学ぶ。卒業後すぐ地元海士町にUターンし現在は海士町後鳥羽院資料館に勤務。二児の母。

子育て中に短歌を詠み始める。職場では詩歌部門に所属しており、ウェブデザインを手掛ける同僚や後輩たちの中で一人詩歌方面に邁進しているので、特に衝突もなく平和に日々暮らしている。 隠岐に居ながらにして全国各地の詩歌の賞に応募し続け、いつか有名になりたい。

根岸茜さん

水産加工グループ「海の駅松島」、地域の人気ケーブルテレビ「あまチャンネル」、「島生まれ 島育ち 隠岐牛店」で複業をしつつ、昨年に自分で開墾し、豊田地区のお師匠さんと一緒に育んできた「あかね農園」で野菜づくりにいそしむ日々。(自分では本業だと思っている。たまに地場野菜・特産品売り場「しゃん山」に出荷!)

生まれも育ちも兵庫県、島に出るまで実家をでたことがなかった。専門学校卒業後、6年間歯科衛生士として神戸の病院に勤務し、2019年3月に夫婦で海士町へ移住。 島に来て、たまたま畑を近所の方が貸してくださり、そこから「農」にはまりにはまった(もともとはサボテンを枯らすタイプ)。豊田のあかね農園で過ごす時間がたまらなく好き。豊田だいすき。

 

素敵なプロフィール写真のお話

 

榊原さん 私、プロフィール写真とかめっちゃ適当なんです。「最近撮ったやつ、これでいいわ」って思って、職場の終礼のときにSlackで撮ったスナップ写真を送ったんです。顔半分くらいしか写ってないんですけど、それを切り取って。そしたら、小室君が「僕、撮らしてもらってもいいですか」って言ってくれて。

 

 

これは、隠岐神社の東屋の手前で撮った写真です。ワサワサっとしてるとこに、かわいい実や花があるんですよ。神社の下の方から上がっていって、「私この辺すきなんだよね、かわいい実がなっていて」って言いながら、ひっつき虫とかつきながら、自分で実をとってたんです。私がいいほど(気が済むまで)楽しんだあとに、小室さんが写真を撮ってくれました。

ただ、目つむってますね。笑 私瞬きが多いほうなんだと思います。

 

根岸さん 私も写真の8割は目つむってます。ドライアイですごく乾燥するんですよ。夫が写真好きなので、撮ることも多いけど、大体目はつむってる。

 

 

この写真は、撮られることが分かってるんで、「撮るよー」って言われて演じました。あかね農園で去年撮った写真です。

 

榊原さん この帽子はどこで買ったやつですか?

 

根岸さん この帽子は、ねぎやん(夫)がアウトドアショップで買ってきたやつです。結構覆われてるから、陰になる部分が多くて。暑い夏はとくにおすすめです。

去年ベトナムに行ったときにも帽子を買ったんですけど、マッサージ店に忘れてきてしまって。でも「家にあるからいいや」と思って。

 

榊原さん 私の家にもこういう帽子あると思う。お遍路さんのやつ。笑 南無阿弥陀仏とか、なんか文字が書いてあるやつ。

 

わたしの性格

 

榊原さん そもそも私そんなにしゃべんないし。数カ月に一遍くらい喋るモードの日があるかな。人と会うときなんかは、逆算してモードを合わせますね。

私、大学卒業してすぐにUターンしたんですけど、卒業してすぐの21、2歳の頃はキンニャモニャセンターで働いてたんですよ。そこで、野菜を包んでる新聞記事とかじっくり読むようなやつだったんです。その時の先輩に、「有紀ちゃんってよく分からないよね」って言われて、「直さないといけないのかな」って思ったんです。

20代後半のときに、Iターンの子からFacebook(以下「FB」)を薦められました。FBというものが世の中にあるって知らなかったんですけど、その時に「言いたいことはSNSで言えばいいんだ」って思ったんですよ。

同年代の人とどう接したらいいか分かんないんですよね。ママ友付き合いとかも苦手で。

 

根岸さん 年上と年下やったらどちらと喋るほうが気楽ですか?

 

榊原さん 私、詩吟やってるんですけど、おじいちゃんおばあちゃんが好きなんですよ。年上の人だと安心感がある。

そもそもお年寄りだと、ジェネレーションギャップがあるので話が合わないじゃないですか。だから、私がなんか変なこと言っても、「若い人ってこんな感じなのかな」って受け入れてもらえる。笑 そんな感じの安心感ですね。

仕事では、観光客と一回だけ会ってお話するので、人見知りだけど平気なんですよ。「この時間、この人たちとお話をして楽しんでもらえればいいから」ってことで一生懸命やるんだけど、地元の人と継続的に仲良くするのが苦手かもしれないです。毎回初対面の人の方が楽ですね。

 

根岸さん 私もめっちゃ人見知りですよ。初対面はすごく頑張るんで大丈夫ですけど、「二度目まして」が緊張します。笑

三度目くらいから徐々に仲良くなる感じですね。一回目はいけるけど、二回目は恥ずかしくなる。一年も経つと行事なんかで自己紹介するときに、改めて自己紹介するのも恥ずかしいなってなりますね。

 

ラジオ体操の音楽で始まりツイッターで終わる一日

 

寺田 日々どんなふうに朝起きて、何を聞いて、どんなふうに一日を過ごしているのかお聞きしたいです。

 

榊原さん この時間は大体もう寝る態勢に入ってますね。寝るのがめっちゃ早くて、9時半頃には布団に入ってます。ツイ廃なので、ツイッター見てますね。「今日も心が穏やかだな、ツイッターを見てると」って思いながら寝落ちします。

俳句とか、短歌を勝手につぶやいてくれるボットもあるので、それがタイムラインに流れてくるのを見たり。言いたいことをワーと打って寝落ちたり。

私、実家に居候していて2階で寝てるんですけど、両親が朝早起きなんです。5時過ぎくらいから下で元気なんですよ。母は6時半にラジオ体操の音楽をかけて体操してます。

 

大野 朝は何時くらいに起きるんですか。

 

榊原さん 朝は結構粘りますね。6時半とか。子どもを起こして、洗濯機をまわして、その間にごはんを食べて、お風呂洗ったりしてから出かけます。8時15分くらいには職場にいますね。帰るのは定時だと5時半ですけど、若干遅くなって6時半くらいかな。

 

農家だけど朝が苦手です

 

根岸さん 私は朝がめちゃめちゃ弱いんですよ。起きるのが嫌いすぎて。農家なので、だめなんですけどね。笑

夏に「農家の朝は早いチャレンジ」って自分でタイトルつけて、試してみたんです。「とりあえず、明日めっちゃ早く起きるわ」って宣言して、4時半くらいにアラームをセットして。翌朝アラームが鳴って、止めて、鳴って、止めてってしてたら、結局6時半過ぎ頃になっちゃって。笑 しかも今だんだん暗くなっていくじゃないですか、寒いし。起きれない。

旦那は目覚めたらスッと起きるんですけど、私はワンクッション挟まないと起きられないんです。起きるための「あーーー!」みたいな何かを叫んでからじゃないと。本当に布団から出たくなくて。可能ならばずっと布団の中にいたいですね。

いやいや起きたら、ねぎやん(夫)がいつも豆を挽いてくれるので、コーヒー飲んで、朝ご飯食べて、洗濯して。日課は晩ごはんの時に出た生ごみを、朝畑のコンポストに入れに行くことですかね。天気がよければ、仕事の前に必ず畑に行ってチェックするっていうのも日課です。

朝ね「もっと早く起きれたら、もっと時間使えるんやろな」って分かるんですけど、起きれないんですよ。

 

大野 夜型ってわけではないの?

 

根岸さん 夜も眠いです。本当にずっと寝れます。ここ最近の最長記録は14時間です。朝目覚めたら「今日だめー」ってなって。別に何時間寝られるかチャレンジしたわけじゃないですよ。何度か目覚めたけど、すぐ寝るって感じでした。

夜は本読んだり、絵描いたりしてます。あと、野菜のスケジュール考えたり。いつ何を蒔いてとか、「この子(野菜)とこの子(野菜)の相性いい!」みたいなことを考えてます。

 

たくましい野菜たち

 

根岸さん 畑はオーシャンビューです。

 

 

根岸さん ただ塩害がすごいんですよ。台風のあとは絶望的な状態になります。いろんなところからいろんなものが飛んできて、海水の塩もかかって野菜が真っ白になってたり。初めて台風が来た時は、畑でめっちゃ泣きました。「ごめん、ごめん。なんもできんくて~泣」って。

でも、去年の夏には2週間くらい畑ほったらかして、ベトナム行ったりしてたんですけどね。笑 大分草生えてたけど、野菜の生命力はすごかったです。

 

根岸さんが「我が子」と呼ぶ自慢の野菜たち。

 

榊原さん たしかに、草のなかにいる野菜の生命力ってすごいですよね。私は、うちの両親が畑でつくるものをただ食べるだけなんですけど。

今年、草がワッサワサになってるとこに小玉スイカがあって、「本当は日当たりが良いところにあるもんだから、おいしくないんだろうね」って話してたんだけど、食べてみたらすごく美味しかったんです。

 

根岸さん 私も草に隠れてたおかげで、全然カラスに取られてなかったことはありましたね。近所のおばあちゃんたちの畑は、みんなカラスの被害がすごくて。私の場合、取られることもなかったんですけど、どこにスイカがあるのかも分かんなくて。笑 草かき分けて探しました。

 

鍬一本から豆トラへ

 

根岸さん この秋に私も豆トラを買いまして。山野さんがその開封に立ち会ってくれて。笑 区長さんもいて、「お祝い事やから餅投げする?」って言ってくれました。

軽量タイプを買ったんで、値段は8万円くらいでしたね。小型のクボタです。もともと鍬一本でやってたんですけど、畑自体が結構広大になっちゃったんで、「これでは無理だ、間に合わん」ってなって。気づいたら夜になってることもありましたし。何回か、知り合いがトラクターで助けに来てくれたこともあったんですけど。

 

苦手な生き物との格闘

 

榊原さん 畑仕事してて、苦手な生き物とかいます?

 

根岸さん 苦手な生き物はいないですね。虫は無理なんですけど、畑で会う虫は全然大丈夫なんですよ。家の中でみる虫は無理ですけど、畑なら普通につまんでます。

団体で来られるとちょっときついですね。笑 この前、キャベツに青虫が団体でいたんですよ。素手ではさわれなくて、手袋でポイっと。おばあちゃんたちは「つぶしとくわー!」って言って、素手で潰しますけどね。テントウムシだましやったら私もつぶせるけど、青虫は潰したあとを見たくないなと思って...

このあいだは、青虫を集めて牡蠣殻に乗せて海岸沿いに置いときました。カラスが食べたか、逃げたか分からないけど。近くに置いといたらまた寄ってくるんで。苦手なわけじゃないけど、「うぇっ」ってなるときはあるって感じかな。

 

榊原さん 私はナメクジがめちゃめちゃ苦手です。畑で見かける分には、「私が彼らのテリトリーにいるんだから、虫がいるのは仕方がないってことだよね」って言い聞かせて我慢しますね。

家だと、夜トイレにいくときの廊下に必ず出るんです。ただ私以外の誰も処理してくれないんですよ。母も嫌いなはずなのに。廊下にいるやつを私がティッシュでつまんで外に投げるのが日課ですね。朝になると母に「庭にティッシュ落ちてるけど、あれどうしたの?」って言われて、「夜にナメクジをやっつけたんだわ」って。廊下に出るので本当に困ります。

根岸さん 畑では大丈夫だけど、野菜をシンクで洗ってるときに虫が出てきたら、「あわわわ」ってなります。すぐ湯かけますけどね。出てくるたびに湯かけて。笑

 

描くことが好き

 

根岸さん 絵を描くのは昔から好きですね。最初は小学校の図工の先生になりたくて。小学生の時、私が係りだったので図工準備室に入ったら、布が被された絵がたくさんあって、何か聞いたら先生が見せてくれたんです。人がいて、頭のところが全部迷路になってて。そんなん見たことないから、すごいかっこよく見えた。それから私も絵を描こうと思うようになったし、図工も好きでした。

 

寺田 その先生は海士に来たことある?

 

根岸さん 呼んでないし、そもそも名前が思い出せないんです。どっかの教頭先生になったって話は聞いたけど、何歳くらいなんやろ、年齢も覚えてないし。

 

榊原さん 私も子どもの頃絵を描くのが好きでしたわ。自分でお話をしゃべりながら描いてた気がします。

アニメも好きだった。高校進学の時に、声優さんの学校に行きたいって言ったら、めちゃくちゃ父に反対されて。結局地元の高校に行ったんですけど。

反対された理由は、職業の選択の自由が狭まるからですかね。「もう少しいろんなもの見てからでもできるんじゃないか」って言われましたね。

キャラクターの絵とか描きました?

 

根岸さん キャラクターよりは、なんだろう。我が家にプリンターなどなく、両親の年賀状はプリントゴッコで作ってたんですよ。マンションの畳いっぱいに広げて。でも私はそれがめっちゃ嫌で。べちゃってなるのが嫌やったんです。「私は自分で描くから!」って言って。こだわりがあって、全員に違う絵を描いてました。

 

大野 今はなんの絵を描いてるの?

 

根岸さん 今は畑。観察記録じゃないけど、畑の野菜と私のキャラクターを描いてます。あかね農園公式インスタグラム(@a__farm)があって。笑 帽子かぶってるのが私で。今まで紙に描いてたんですけど、iPadというものを手に入れて、それで描いてます。

 

 

根岸さん 野菜の写真と一緒に載せてます。

 

 

根岸さん これをちまちまと描いてます。不定期で気が乗ったら描いてるって感じですね。晩ごはん食べ終わったあとに、2,3時間集中して描いてることが多いかな。

本当は、自分が出荷する野菜にシールを貼ろうと思ってたんですよ。ロゴシール。それがきっかけで描き始めました。描くだけじゃもったいないから、とりあえずアップしていこうと思って、インスタにあげてます。LINEスタンプなんかもいつかやりたいですね。

 

大野 これは完全に好きが興じてやってるの?何かトレーニング受けた?

 

根岸さん 好きで、独学で。美大とか行ってたわけじゃないし。歯科衛生士だったので。高校卒業して、専門学校行って、資格とって、6年間神戸で歯科衛生士をやってました。

 

植物博士と過ごす時間

 

寺田 海士の植物博士の丹後亜興(たんご つぐおき)さんと一緒に西ノ島行こうってなってましたよね、コロナで流れちゃったみたいですけど。あの時間はどういう感じであるんですか。

 

榊原さん 丹後さんがひたすら、「これはこうで、あれはああで、ああでね」って言う会ですよ。ここで紹介するなら丹後さんという人は「植物学者で老紳士」って感じ。

 

根岸さん 私も豊田なのでしょっちゅう会います。前、中学生向けだったかな?豊田を散策する会があって、私も行ったんです。誰も足を踏み入れないような豊田の奥の洞窟を紹介するって言って。

丹後さんだけ、サッサッサっと歩いて行ってましたね。中学生は足元に気を付けながら進んでいくのに、何歳だっけ?(※78歳です。)丹後さんの足取りがすごい軽くて。

自転車でいつも菱まで行ってるから。お買い物も、自転車の後ろに段ボールつけて爆走してる。本当にすごい。

 

榊原さん 私が資料館から出て丹後さんが自転車で通り過ぎるのを見かけた時は、「あ、丹後さんだ。やった!今日はいい日だな」って思います。

 

寺田 分かります。海士中の植物を見て歩いてるから、その一瞬に会えるってすごいことだなって思います。

 

根岸さん なかなか家にいないですもんね。天気のいい日は外に出てる。

 

榊原さん 丹後さんは俳句が好きなんですよ。植物が出てくる俳句を集めておられて、それが最高だと思って、私も植物が出ている俳句を探すんですよ。「この句集のこれは丹後さんが知らないやつなんじゃないか」と思って、ワードにいっぱい書き溜めとくんです。「丹後さんを喜ばせたい!」って思って。それをメールで送ったら「いやー、うれしかったですね。30分くらい見ました。」って返信がきたんです。

 

お気に入りのフィギュアを外へ連れ出してみる

 

榊原さん 最近趣味の話を人とあまりしてなかったんで、自分のFBを見て、「私はこれが好きだったんだな」っていろいろ思い出しました。

『ジョジョの奇妙な冒険』のモハメド・アヴドゥルさんってキャラが大好きで。占い師で古書集めが好きっていうキャラなんですけど、そういう人がドストライクなんですよね。フィギュアを外に連れてってあげたいと思ったんです。

 

 

榊原さん これは西ノ島のどっかの展望台に連れてってあげた時の写真です。このキャラは日本が好きらしいんですよ。

 

 

榊原さん これは浦郷(西ノ島)のお寺の敷地内にある不動明王の石像ですね。その前に連れてってあげて。そしたら、異国情緒溢れる写真が撮れたんですよ。「やべー!」と思って。すごい楽しいんです。

自分の好きな人形とか連れてってあげると、漠然と風景写真を撮るより面白くなりますよ。

 

根岸さん 顔気になるなー。振り向いてほしい。笑

これやってる時の有紀さんを遠目で見てみたいです。声かけずに見ときたい。

 

榊原さん フィギュアの時ではないですが、見つかったことあるんです。家督(あとど)山にアマナっていう可愛い花が咲くんですよ、春先に。それを丹後さんが「好きだ」っていうんですよね。

前に一緒に行ったときは、まだ咲いてなくて、「なくなっちゃったのかな、ここに咲いてたんだけど」って言ってて。私はそれを覚えてて、「今度花が咲いたときに来て絶対写真を撮ろう」って決めてたんです。

娘の卒業式の後かなんかに、ダッシュで行って写真を撮ったんですよね。めっちゃしゃがんで、下の方から撮ってたら、石川夫妻が車で上がってきて。しかもその時に、「僕ら、ちょっと険悪な雰囲気だったんだけど、なんかもう忘れて元気出ました」って言われたんです。

 

木魚をポクポク叩いて...

 

根岸さん 最近スッキリしたことはありますか?

 

榊原さん スッキリしたこと?いやー、あるんだわ。笑 スマホゲーですごいはまってるゲームがあって、「ここに墓を建てよう」っていうやつなんですよ。

『月刊住職』っていう雑誌に何年か前に載ってたんですけど。めっちゃかわいいキャラが出てくるんです。シロクマみたいな犬みたいなキャラで「ハカモリ」ってやつがいて。その人に「あなたは死にました」って言われて、「これから徳を積んでいかんといけませんわ、ここに木魚があるから叩いてみましょう」って言われて、試しにポクポク叩いてみると、小さいかわいい鬼みたいなのが集まってきて、それを叩くたびに成仏して消えていくんです。それがすごいかわいいんです。

叩けば叩くほど墓がグレードアップするんですよ。最初はハムスターの墓から始まるんです。アイスの棒が刺さってるんですよ。それが普通のお墓になり、沖縄風の石造りの墓になり、ピラミッドになりみたいな。古墳に入れたりもするんですよ。

 

大野 徳はどうやって積むんですか。

 

榊原さん 徳はただただ木魚を叩いて積んでいくんですよ。フルーツの盛り合わせがあるので、それをお供えすると徳が倍増することもあります。ただただスマホをタップするだけです。

何年か前にすごくはまっていたゲームで、久しぶりにやって「これ、今日はみんなに絶対楽しさを伝えないけん」って思って。すごくスッキリするんです。悩める子たちをいっぱい成仏させてあげると気持ちが穏やかになるんです。タップし続けてるときは、「あれ、私何してるんだろう」ってなりますけどね。笑

前にはまってた時には、うちの職場の子が「なんかモヤモヤすることがあるんです」って言うから、「じゃあこれしてあげっけん」って言って、お墓をその人の名前にしたんです。これで叩いて、その人が徳を積んだことにしようと思って。

 

わたしのバイブル

 

根岸さん 海士に来てから野菜の本か、料理の本か、カレーの本しか読んでなくて。神戸にいたときは電車通勤だったんで、ずっと本読んでたんですけど。

おすすめしたいのは、『自給自足の自然菜園12カ月』っていう竹内さんの本ですね。図書館にあるんですよ。こっちに来てから借りて、延長延長で半年くらい借りてたんですけど、最後は自分で買いました。

それを持って、畑に行きます。見やすいんですよ。栽培方法が図解みたいな感じで書いてあって、文章も細かくなくて。

 

 

お話会 榊原有紀さん×根岸茜さん【後編】へつづく

 

 

 

 






吉田 愛梨
Eri Yoshida

amatte 編集室 / 海士町在住
1992年生まれ、京都育ち。社会学修士。大学院在学中に海士町を訪れ、この島特有の暮らしの営みやその中で育まれる人間関係に興味を抱き2019年4月に移住。1年間の短期滞在の予定だったが、居心地が良く引き続きこの地で暮らすことに。住んでいるのに、旅をしているような気分になれる瞬間が好き。

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