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2020.01.06

「なぜ?」をくれる場所・海士町

隠岐島前高校OG 西澤七海(にしざわななみ)

 

<プロフィール>
大阪生まれ兵庫県三田(さんだ)市の山側育ち。島前高校進学を機に海士町で3年間を過ごし、2019年4月に東京の大学に進学。大学に通うかたわらインターンでwebライティングの仕事をしたり島根OB・OGによる島根のための活動にも参画したりしている。人好きの負けず嫌い。

 

―海士町は何がきっかけで知ったのですか?

父方の祖母が知夫の出身なんですよ。毎年夏休には家族みんなで知夫に帰るっていうのはずっとしてて。だから知夫にはなじみがあって。ちっちゃい時の自分にとって島は知夫というイメージでした。

それで兄がちょうど高校進学するタイミングでたまたま雑誌で島前高校の記事を見て、「なんか島に高校ある、めっちゃ面白そうなことしてる、じゃ家族で見に行こう!」ってなって。いざ行ったら当時小学生だった私が島前高校に行きたいってなりました。

 

―小学生から一途に想い続けたなんてすごいですね。

自分にとって島は夏に行く楽しいところだったし、その頃隠岐自然村のしまのこ自然楽校というキャンプに参加するようになってて、なおさら「島に住めるって何それ、島住みたい!」と思いました。そのまま気持ちが変わらないまま島前高校に進学しました。


―いざ移住した海士町はどうでした?

遊びに行くのと実際住むのとではやっぱり違いました。住んだからこそ分かる「やっぱり不便だな」ということもありました。観光で行くなら7時に店が閉まろうと「ま、島だしな!」と思えるけど、いざ住んでいると、部活が6時半まであるとそれから日用品買いに行けないなとか、何するにしてもめっちゃ遠いとか、そういうちっちゃい不便に気づいたり。それ全部含めて「ま、島の生活だな」みたいな感じもするんですけど。

あと人との繋がりも大きな違いですね。何もないから人と会うしかない。カラオケもゲームセンターもファーストフードもないから、予定があるって言ったら人と会うこと。人との繋がりがめっちゃ密にあるなっていうのは感じました。

島前は人がやっていることが見える。町長は誰で、どんな人でどんなつながりがあるとか、役場で働いている人や学習センターで働いている人それぞれが何に頑張っているかが伝わってきて。周りの友だちとも「私これ頑張りたいんだよね」っていう話とかできて、『人』が見えていました。


―学校の方はどうでしたか?

高校生活ずっとモヤモヤしてました。本当に憧れて、入りたくて、入りたくて、しょうがなくて、入ったらヒトツナギ部に入ろうとか、地域と何かしたいって思って入ったはずなんですけど、最初の方に「あ、なんか自分はこれじゃないな」って思っちゃったんですよね。島前っていう土地は好きだし、そこにいる人は好きだけど、別に地域のために頑張るっていう選択肢は自分にとってないなって気づいてから、じゃあ自分にとってはやりたいことは何なんだろうって延々もやもやして。その間イベントに行ったり部活続けたりしても、「これじゃない」みたいな感覚のまま高校3年くらいまでなって。ターニングポイントは高校3年生の夏でした。

 

―どんなターニングポイントだったんですか?

千葉県であった高校生のやりたいことを見つける2泊3日っていうサマープログラムに参加したときに、「あ、高校生ってなんでもやっていいんだ」っていうことに気付いて。それまで部活か、勉強か、島前だと地域活動か三択くらいだったけど、そこにいる子たちって本当に高校いる時から起業してますとか、大学生と学生団体してますとか、留学してますとか、高校休学してダンスやってますっていう子とかいて、自由なんですよね。「何でもいいならやってみよう」って始めるようになったんです。

 

―サマープログラムの後何か実際にやってみたんですか?

寮内の高校1年から高校3年までゆるく集まって、「自分は○○話せます」というトピックを出して相談受けたり話を聞くイベントやりました。それまでも後輩から個別で相談受けることはあっても、高校3年生たちが経験したことが後輩たちにちゃんと引き継げてないな、こんなにも身近に相談できる人がいるのに同じことで悩んでいるのがもったいないな、あの人の方が適任だよとか気づくことがあって。

あとは地元に帰ったときに大阪で高校生と社会人のイベントをやったり、人との場づくりに取り組みましたね。

活発に動いている子に関東圏の子が多い印象があって、島と東京にいるのだと選択肢ってやっぱり違うのかな、選択肢ってどうやったら増えるんだろうって思った時に、自分が「何かこういうこと始めたいな」って思う時はやっぱり人がきっかけだったから、人に会うことが価値になるんじゃないかなって考えました。寮内で今までしゃべらなかった人としゃべれるようにしようとか、高校生が普段話す相手って自分の親か先生か塾の人かっていう環境の中で全然違う働き方してる大人と会ってみたら面白いよなとか、そういうつもりでイベントやりましたね。私、人がめっちゃ好きなんですよね。

自由登校期間の高校3年生の2月に参加したイベントではルーツしまねという団体のメンバーと仲良くなりました。ルーツしまねというのは、出身の人や島留学の学生が卒業や就職で県外に出てしまったらつながりがなくなってしまうのがもったいないと思う人が集まっていて、島根はどうやって面白くなれるかなとか、自分と島根の関わり方を考えていこうっていう団体なんです。その後もイベントに誘われたりするうちに島根全体に知っている人が増えて、関わりが島前から島根全体にひろがりました。


―入学して半年、大学生活はどうですか?

進学先を決める時点で興味あることが分散していてひとつに絞れなくて、学際的なところにしようと社会学科を選びました。学科の人数は60人なので高校の1学年と同じくらいです。学科にはとっても面白い子が多いんですが、まだ寮の頃のような暑苦しいくらいの友人はいなくて、ちょっと物足りない感じです。

サークルも入ったんですが颯爽と辞めました。日常的な感覚が違ったり、国際志向がなかったり、自分は今のところこの大学っぽくないなーって思っています。ゼミ入ったらまた変わるかもしれません。

だからインターンとかで大学の外に出ています。何かスキルを身に付けたいなと思って。週1回出勤で企業のオウンドメディアで記事を書いています。東京はいろんな人に会えたり、インターンシップにすぐ参加できたりチャンスが多いと思います。

 

―これからやって行きたいことってありますか?

今はインターン先のメディアを育てることをすごくやりたい。最初の方は「インターン生だし」っていうバイト感覚で始めたけど、社員さんと仲良くなって、「『インターン生だから』って考えてる自分がだめだな」と感じて、社員さん並みに頑張ろうって思い始めてから楽しいです。大学1年生をインターンで取ってくれるところが少ないのに取ってくれたからそれは頑張んなきゃって。一緒に入った同期もいるんですが、負けたくないので勝手にバチバチしてます。この間はインターン続ける理由ってなんなんだろう、って自分で振り返りもしました。私考えるのめっちゃ好きなんですよね。島前高校生はわりと自分で振り返りしますけど、外に出てそれが普通じゃないんだな、って気づきました。

あとやってみたいっていうことでは、シェアハウスとか、コワーキングスペースとか、地域に密着しつつ人をゆるくつなげている場所にいたいっていうのがあります。やっぱり人が好きなんですよね。大学入ってからも大学生と社会人のイベントやったり。三田でコワーキングやっている子は自分と似ているなって思ったんですけど、似ている人がコワーキングを天職だと思うっていうことは自分にも当てはまるかもなって考えていて、場として持てたらすごくいなーって興味あります。

先の将来は白紙です。今の時期を人生の味見期間って呼んでいて、「とりあえずやってみよう」っていう感じ。もしかしたら三田に帰っているかもしれないし、島根のどこかか、海士町にいるかもしれないし、他の場所にいるかもしれない。でも定住はしたくないな。自分が好きだなと思っているところを転々としていきたいなって思ってます。自分としての場を持ちたいっていうのもあるし、点々としたいっていうのもあるし、北海道住んでみたいなっていうのもあるし。一瞬で変わっちゃうじゃないですか、人生。どこで誰と出会うか分かんないし、何と出会うか分かんないし、なんかまだ決めきれないな。

 

―生活に不便があったり、思いがけない高校生活だったり。それでも島前へ行ってよかったですか?

よかったです。この前在校時に魅力化コーディネーターをされていた方と話しをしたんです。「島前って何もない自分を認めてくれる場所だよね」、「何者でもない自分でいい場所だよね」って。等身大でいいよって受け止めてくれる場所だったし、でもそれをそのままで許してくれるかというとまたそうじゃない。頑張っていくのを応援してくれるし。めっちゃ恵まれてる環境だったな。

「なんで。なんで」って詰めてくる大人がめっちゃ多いんですよ。高校時代は「なんでって言われてもわっかんないよ」って思ってたんですけど、東京出てきたら「なんで、なんで」って言ってくれる大人が全然いなくって。「なんで、なんで」っていうのは厳しさより優しさだったんだなっていうのに気付きました。自分のこととか、自分のこれからを考えてくれるからこそ「なんで」って詰めてくれるし、正解がないからこそ何言ってもとりあえず認た上でもう一回「なんで」って聞いてくれるっていう。そういう環境がめっちゃよかったって今になって気付いてます。「なんでって詰められたい」って恋しくなります。あれがあったから今自分でやり始めることに対して自分で「なんで」って考える力がついたと思います。寮生活で24時間一緒にいる友だちと、信頼関係があるうえで、「将来何したい」とか「大学行ったら何したい」とか、消灯時間すぎてから先生に怒られながらも熱く語ってきたから、今すごく物足りないです。

それに帰れる場所が増えたましたから。島前っていう。もう行く場所じゃないし。みんな帰っておいでって言ってくれる場所で。帰れる場所があるって思えるから、東京や他の場所に行きたいって思える。「何かあってもとりあえず海士あるしな」って。とりあえず島前で迎えてくれる人がいるっていう安心感があるから、いろんな地域に行っても怖くないなって思います。

 

 

―海士町に帰りたいと思いますか?

まだ海士には私帰れないって感じです。もうちょっと行き詰まるか何か成し遂げたら帰りたいかな。それかずっと東京にいると自分で何が変わって感じ方がどう変わったか分からないので、一回島に帰って、自分の高校時代とどう変わったかって考えるのはありだなと思います。

ただ寮生活には戻ってみたいですかね。お風呂場にシャボン玉持ち込んだり、豪雨の中サッカーやってみたり、くだらないことも真面目なことも全力でやる人たちが集まってた。もう一生あの時のメンバーでみんなが泊まることってないんだなって思うと、なおさら帰りたいなって思います。

 

 

―今後島前や島根とどう関わっていきたいというイメージはありますか?

海士町に行って、一回東京に出て、いろんな場所を遠くから見るようになって、自分の出身の三田も知るべきだなと思って地元に帰ってみたんですよ。三田でコワーキングスペースをやっている人とかイベントをやっている人に会いに行ったんです。同い年で高校在学中に起業した人と会ったんですけど、その子が話しかけられたおじさんに「三田は頑張る若者を応援する姿勢があるんです」って言ってて。でも自分はそれを感じたことがなかった。その時に、大事なのはタイミングと縁と運だなと思って。「地元だから地元のために頑張んなきゃと思ってたけれど、そうでもないな、自分が頑張りたい場所で頑張ろう」って思えるようになった。自分にはそれが海士とか島根であったのかな、って。島前に帰りたいという気持ちはないんだけど、島根には関わり続けたいっていう気持ちがあって、あとは自分次第だなと思えるようになった。

ルーツしまねには東京支部もあって、がっつり移住するとかじゃなくって、外から関わり続けていたいなっていう気持ちです。大学入ってからも島根においでよ、ルーツしまねおいでよって言いまくってます。海士町をフィールドにしている教授がいて、大学の同級生にも地域に興味ある子がいるはずで。東京で育った子たちは、どこに行っても知ってる人に会うみたいな密なコミュニティを絶対知らないし、なにもないっていうのを体験したことがないから、どんな反応をするか見てみたいです。

インターンを始めたのも島で出会ってきた人たちと同等に、一緒に何かやれる立場になりたいって思ったところがあって。自分が得意なスキルを伸ばして、ガツガツ成長して外から関わっていけたらいいな。






内山 貴之
Takayuki Uchiyama

amatte 編集室 / 東京在住
1978年生まれ、東京育ち。幼少期の夏休みは両親の故郷鹿児島でリヤカーを引っ張り野山を駆け回って過ごす。「自分だったら生きたくない世界」が今この時にあることが頭の中から追い出せず、国際関係について学んだのちJICAに5年弱勤務。その後国際協力はライフワークにすることにし、家業の南の離島専門の旅行会社・南西旅行開発を継ぐ。2017年大野とともに株式会社余白探究集団を起業。

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