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特集 > 一から造る島のワインで一緒に乾杯しませんか?
2021.06.20

ここで一からブドウをつくります

「穴掘りが一番大変!」

額の汗を拭いつつ、スコップ片手に笑顔で話す石川じゅんさん。

その眼には、新たな挑戦へのわくわく感と、目前の地道な作業への孤独感が入り混じっていました。

 

土壌づくりからスタート

2021年5月19日。

ぶどうの苗を植えるための穴掘りを始めたと聞いたので、じゅんさんの畑を訪ねました。

地図アプリを見ながら事前に教えてもらった場所へ向かうと、道路わきにじゅんさんの自転車を発見。とても分かりやすい目印でした。

 

 

じゅんさんと合流し、掘り進めている穴がある場所へ。道があるわけでもなく、畑の中を進んでいきます。

 

 

全身土塗れの背中を見ながらついていくと、畑の一番奥の区画にきれいに並んだ10個ほどの穴が見えてきました。

 

 

根が張りやすいよう、穴の大きさは直径60㎝、深さ60㎝に揃えているとのこと。ただ、この土地は表土(植物が育つ層)が薄く、2~30㎝ほど掘ると砂がガチガチに固まったかのような硬い層が出てくるため、掘るのがとても大変だと言います。

 

「ショベルカーでやったら?って言われる。ぼくの挑戦を応援してくれている町も設備投資の面で協力してくれると思う。でも、お金の問題じゃないから。とりあえず、やってみる!」

 

そう言いながら、実際に一つ穴を掘ってくれました。

 

 

最初は円を描くように掘り進めます。

 

 

全身を使いつつ、とても軽やかに掘っていく石川さん。なんだか楽しそうです。

 

「最近は穴の掘り方をネットで調べたりもしてるんです。海士で穴掘り一番上手なんじゃないかな。笑」

 

 

硬い部分が出てくるとクワに持ち替え、慣れた手つきで土を割り始めます。そして、割った土を再度スコップで穴の外に出していきます。

 

「重力は強いなって改めて思う。4~50㎝も掘ると本当に土を出すのが大変です。」

 

土を出すときは必ず上手側に出すようにし、戻しやすいようにしているそう。

 

 

ある程度掘ったら、穴の深さを確認します。あらかじめスコップの柄の部分に付けておいた60㎝の印が目印です。

 

 

「穴の深さが50㎝だからってぶどうが育たないわけじゃない。でも60㎝の方が育つだろうって思う。」

 

「深さを確認して、足りないときは『少しくらいいいか』って思いそうになるけど、そこで諦めると、どこまでも『今回はいいじゃん』ってなりそう。『ここまではやったけど、ここからはやってない』そういうのが嫌なんです。うそのない状態にしたい。」

 

そう言いつつ、ものの数分で一つの穴を掘り終えました。

 

 

「10個掘り終えたことは嬉しい。けど、目指しているとこ(目標300個)と比べると絶望的…。嫌にならずに進めるにはどうすればいいか考えてます。」

 

苦笑いしながら、まだ穴を掘っていない区画の畑を見渡す石川さん。ショベルカーを使わず、人の手で穴堀を進めることにこだわるのは、「自然にやさしく」という彼自身が定めたミッションがあるからです。

 

常に「自然にやさしく」ありたい

 

「ショベルカーを使うとものすごいエネルギーを消費する。そこで発揮される力は人の身体感覚とイコールじゃないから、規模を追求して簡単に範囲を拡張していける。その結果、無駄が出ると思う。自分の手で一つずつ穴を掘っていると、疲れるから『ついでにもう一本植えよう!』とはならないよね。」

 

 

 

畑を見渡すと、あちらこちらに細い竹が立てられ、足元にはツルのような植物が竹と竹の間にピンと張られています。竹は穴の列を一直線にするための基準点となり、ツルは等間隔に穴を配置するための目印となります。

 

 

「今日の午前中は、紐の代わりになるようなツルを探してきて、つなぎ合わせてました。ぶどう作りの方法は師匠から学ぶけど、そのまま適用するわけじゃなく、自分たちならどうするかを考えます。支柱などの素材もぼくは自然に還るもので補いたい。」

 

先日、島内の飲食店でMy箸を持参する石川さんご夫婦の姿を見かけました。「自然にやさしく」という心がけは、ぶどう栽培やワインづくりの場面を超えて、日常生活でも体現しているようです。

 

石川さんが思う「自然にやさしいこと」は、自然環境への負荷が大きい既存の石油エネルギーから、負荷が小さい代替エネルギーへの変換とは大きく異なります。

 

ぶどう畑をつくる際に必要なあらゆる動力や資源、素材を可能な限り自然に還るもので賄おうとする姿は、現代社会に生きる人々に「そこまでやるの?」と驚きの声をもたらします。

 

ただ、そんな揺るぎない信念を核とする無謀な挑戦は、この島の大好物でもあります。町をはじめとして、さまざまな事業者や個人がいろんな場面で声をかけ、進んで手を差し出し、応援してくれます。

 

石川さんがたった一人で始めた穴掘りから、どんな風に人を巻き込んでぶどう栽培、さらにはワイン製造へと進んでいくのか。その様子をじっくり追いかけてみましょう。

 

 

 






吉田 愛梨
Eri Yoshida

amatte 編集室 / 海士町在住
1992年生まれ、京都育ち。社会学修士。大学院在学中に海士町を訪れ、この島特有の暮らしの営みやその中で育まれる人間関係に興味を抱き2019年4月に移住。1年間の短期滞在の予定だったが、居心地が良く引き続きこの地で暮らすことに。住んでいるのに、旅をしているような気分になれる瞬間が好き。

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