『超個人的時間旅行』 A5/96ページ
この本を紹介したいと思った。でもそもそもこの本、面白かったのか?と自問して、んーとなってしまう。例えば宮崎智之さんの「前借りする未来」という章では、人生でこれから何度も思い出すことになる些細な出来事について、それをその出来事が起こっている最中に予期できてしまうこと、それを【デジャブの前借り】と呼でいると、そんな話が書いてある。
これだけ聞いてどう思います?
この本のタイトルは『超個人的時間旅行』、日常の「時間」をテーマにしたショートショートが11本載っているエッセイ集。
エッセイ集と言っても、半地下のレンタルビデオ屋にあったマネキンがなくなった話や高校時代休み時間になると前の席に座り、教科書を取り上げる人の話など。大きな起承転結やためになるオチはない。記憶のかけらのような話が続くので紹介したいと思うものの、面白いですと自信満々におすすめすることができない。
とくに好きな話。牟田都子(むた さとこ)さんの「跳ぶ勇気」という章。牟田さんのお母さんがSONYのベータマックスのビデオデッキで録りためたドラマを見ながら話した言葉を子どもの牟田さんが覚えているという場面。
本当に些細でスッと流れていってしまうような記憶。そんな消えてしまうような記憶の話だからこそ、気になったし紹介したいと思ったのかもしれない。そんな本がいいという方は、海士町図書館でぜひ借りてみてください。